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セイラ4 3章の続き6 [セイラ4]

 市場

 

 クロウリーは、あまり世間の注目を自分達に引き寄せないため、また、自分達がこの島の人間であるかのように思わせるため、セイラとカイの衣装も用意していた。カイは、その衣装を着ると、クロウリーと馬と言う名の牛とともに、市場へと買い出しに出掛けた。

「それで、クロウリーさんは、どう思っているの。やはり、あれが関係しているの。」

 カイがこともなげに発した「あれ」という言葉を耳にして、クロウリーは、一瞬、驚いた表情を浮かべた。この島に来て一月ほど調べてようやく事件の手掛かりらしい物を発見したというのに、なぜ、そのことを知っているのだろう、と訝った。

「カイ君、あれって何ですか。」

 カイが、ますます柔和な笑みを浮かべて、眉を動かすことなく、何事でもないかのように「嫌だなあ、そんなに僕を警戒しないでもいいでしょう。目的は一緒なんですから、情報交換をした方が得ではありませんか。それに、僕は、姉ちゃんとクロウリーさんを自分の手を殺したくありませんから」と、物騒なことまでを口にしだした。

 どうやら、カイがセイラと関係なくこの島に来たことは間違いなかった。

「参考までに聞きたいのですが、もしこの事件の真相を知ったら、私達はどうなるのでしょう。」

「ひょっとしたら、戦争になるかもしれませんね。これは僕の予想ですが、クロウリーさんの国はなくなり、この小さな島国も不毛の焦土と化すのではないでしょうか。それでも、知りたいですか、クロウリーさん。」

 カイは僅か十四才の少年である。その少年が眉一つ動かすこのなく、数千、数万、いやもっと多くの人間が戦場の露になるといっているのである。クロウリーはカイの言葉に、そして、そのことを平気な顔で口にするカイという少年に戦慄した。

「そうですか、だとしたら、知りたくないですね。それにしても、カイ君は、一体、何者なんですか。前々からこのことを聞いてみたいと思っていたのですが、それも知ってはいけないことなんでしょうか。」

「多分。それは、僕がこのの国に来た本当の理由に関わりますから。そして、このことは永久に封印しておかないといけないことですから。」

 永久に封印して置かなければならない事とは何であろうか。それが元で戦争にさえなり兼ねない事とは何だろう。そして、カイ君の果たすべき本当の使命とはなんなのだろうか。

 これらの疑問がクロウリーの頭に浮かんだ瞬間、「駄目ですよ、クロウリーさん。詮索しないって、約束したばかりじゃないですか。それに、僕みたいないたいけな子供の手を赤く染めさせてはいけないと思うのですが、クロウリーさんは、どう思いますか」と、クロウリーの心を見透かしたように、カイが微笑みながらこう語りかけてきた。クロウリーは、「それもそうですね」と言うと、それ以上そのことについて考えないようにした。そして、自分が手に入れた情報をカイに全て伝えた。

 クロウリーの話を聞き終えた時、カイの表情には微かに安堵の色が浮かんでいた。それは、同時にクロウリーが重要な事実を何にひとつ掴んでいないことの証拠であった。「カイ君から何も聞き出せないだろう」と思いながらも、クロウリーは「今度はカイ君の番ですよ」と尋ねるだけ尋ねてみた。

「古代文明と神話が関わるとだけ言っておきます。神話と言っても、姉ちゃんの本に記されているような代物ではなくて、もっと古い時代の神話です。もちろん、この国の宰相さんもも知らない。宰相さんは何かに気付いたようですが、でも、全くの的外れですね。もっと忌まわしいものです。それに、目指すのは、この島ではなく、ここから南にある小さな無人島ですよ。ホトトギスは、このことに薄々気付いているようですが。」

 そう話し終えた時には、いつもののカイに戻っていた。

「そんなに話してもいいのですか。」

 クロウリーは、出来るだけ明るくそう尋ねた。

「大切なことは何も話してないですよ。それでこらからどうしますか。姉ちゃんたちとこの島で遊んでいますか。それとも、僕と行きますか。」

 難しい選択であった。知り過ぎれば命に関わるのだろう。カイの誘いを断ったとしても、セイラがカイの行方を追うことは必定であり、どの道、彼の後を追う羽目になるのである。それに、魔術師として、永久に封印されなければならない物とは何なのか、それを知りたいという好奇心もあった。過ぎた好奇心が身を滅ぼす原因になりうることはよく知っていたが、その衝動は抑え難かった。クロウリーは「どの道、行くことになるんですから。ですが、カイ君、カイ君がいなくなったら、セイラさんは、間違いなくカイ君の後を追いかけますよ。どうするんですか」と言った。

「それが問題です。本当は、僕一人でこの事件をこっそり解決し、すべてを闇に葬りたかったのですが。」

 そう話し終えた時、カイは自分達を物陰から監視する視線に気付き、何気ない様子でクロウリーに囁きかけてきた。

「どうやら、僕達を監視している人たちがいるようです。」

 クロウリーが驚いて周囲を見回そうとすると、カイがそれを制止した。

「クロウリーさん、ダメですよ、そんなことをしたら。こんな時は、気付いても気付かない振りをするものですよ。」

「ですが、どうして、私達のことを知っているのでしょう。」

「簡単なことです。相手は、僕のことを知っているのですから。」

 何故、敵がカイのことを知っているのか、尋ねたいと思ったが、深入りしないことを彼に約束しているため、クロウリーは敢えてそのことを尋ねないことにした。そして、カイの忠告に従い、監視に気付かない振りをして、買い物を続けた。裏通りに入った時、カイが彼にこう尋ねてきた。

「クロウリーさん、相手を二三日眠らせたり、記憶を操作すること出来ますか。」

 記憶を操作することも出来なくはないが、それはかなり本格的な魔術になる。今すぐ、ここで相手にかけるというわけにはいかなかった。

「一週間くらいなら、今すぐ眠らせることが出来ますが、かけてもいいんですか。」

 クロウリーは、カイがこくりと小さく頷くのを見ると、馬というの名の牛のに背負わせた荷物を直す振りをして、懐から一枚の呪符を取り出した。そして、牛の体を上手く利用して、周囲から見えないようにして、それを破り術を発動した。その瞬間、物陰から監視していたその男はばたりと地面に倒れ込んだ。それから、彼は何事もなかったようにカイの下に戻り、「これで良かったのですか。返って、疑われたりするんじゃないでしょうか。」と尤もらしい指摘をした。

「これで大丈夫ですね。そして、明日にはこの島を立ちましょう。」


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