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セイラ2 1章の続き4 [セイラ2]


 馬車にて


 一行は、男に促されて、行き先も告げられずに宰相の用意した馬車に乗り込んだ。何時の間に用意したのであろう、馬車の中には三人の荷物が用意されていた。それを目にしたクロウリーが如何にも感心した様子で彼女に語りかけてきた。

「前回もそうでしたが、宰相の抜かりなさには驚くばかりですね。一体、どうやって我々の荷物を準備したのでしょ。う」


 彼はそう言うと、馬車の席に腰を下ろし、自分の荷物を調べ始めた。着替えはもちろんのこと、魔術に使う一通りの品が準備されていた。それだけではなく、魔術師ので彼さえ未だ目にしていない最新の魔術書まで用意されていた。クロウリーは改めて宰相の如才なさに感心した。


 彼の斜向かいの席に腰を下ろしたセイラは、他人の迷惑を考えない彼の振舞に憤慨し、彼にクレームをつけた。


「クロウリーさん、少しは他人の迷惑を考えて下さい。この狭い馬車の中で、ご自分の荷物を広げてどうなさるおつもりなのですか。」


「済みません、セイラさん。ちょっと心配だったもんですから。」


 クロウリーはセイラにそう詫びてから、広げた荷物をいそいそと片づけ始めた。そして、宰相が準備をしてくれた魔術書を読み始めた。


 セイラは、その様子を見てから、自分の隣の席に座るカイに目を移した。早起きが応えたのであろうか、カイが彼女にもたれかかるようにして眠っていた。まだあどけなさの残るカイのかわいらしい寝顔を愛しそうに見つめ始めた。


 一方、空腹を託っていたホトトギスは、体重の数倍のお菓子を平らげて、久しぶりに満腹感を味わっていた。彼としては珍しいことであるが、外の景色をぼんやりと眺めていた。王都の街並みの方々に残る薄汚れた雪を眺めながら、物思いに耽り始めた。セイラと知り合った時のこと、そして、彼女と共に過ごしてきたことなどを回想していた。羽毛に覆われているとは言え、本来夏の渡り鳥である彼は、俄に寒気を憶え、暖を取るためにセイラに寄り添おうとした。その時、セイラが愛しそうにカイの寝顔を見ているのに気づき、激しい嫉妬を憶えた。


「セイラ、あれは何かな。」


 ホトトギスは、セイラの関心を引くために、何の変哲もない煙突を右の翼で指し示した。ホトトギスの突然の呼びかけに驚き、彼女が「何なの」と呟きながら視線を彼の指し示す方向に逸らした瞬間、ホトトギスは嫉妬の元凶であるカイに嘴による容赦のない一撃を食らわした。カイが「痛っ」と叫びながら頭に走る激痛で微睡みから目を覚ました。セイラがカイに視線を向けるまでの僅かな時間に、目にも留まらぬ早業で、もう一撃をカイのかわいらしい額に食らわし、ホトトギスは何食わぬ顔をして顔を外に向けた。


「カイ君、どうしたの。」


 ホトトギスは、セイラのその声に驚いた振りをして、視線をセイラに向けた。そして、カイを気遣わしげに見つめるセイラに「どうしたの、セイラ。大きな声を上げたりして」と尋ねた。


 カイは、ホトトギスの攻撃で真っ赤に腫れ上がった額を痛そうに押さえながら、「あいつがやったんだ」とセイラに答えた。セイラは怒りで顔を紅潮させてホトトギスを睨み付けた。


「僕は何もしていないよ。僕はセイラと一緒に煙突を見ていたじゃない。僕がカイに悪戯が出来ないことは、セイラが一番良く知っているでしょう。カイは寝惚けて頭を窓に打ったんじゃないかな。それを僕が悪戯したと勘違いしたんだよ。僕は本当に何もしていないからね、セイラ。」


 偽装工作を施したホトトギスは平然とそう言い放った。セイラの直感はホトトギスの仕業だと強く主張するが、ホトトギスの主張は筋が通っていた。確かに、ホトトギスは彼女と外の景色を見ていたはずであった。何れの主張が真実なのか確かめるために、セイラは「カイ君、見せて」と言って彼の赤く腫れ上がった額の傷を見た。しかし、ホトトギスの仕業なのか、カイが寝惚けて頭を窓に打ち付けたのか、判別することが出来なかった。セイラはホトトギスに「本当に、あなたは何もしていないのね」と確認した。ホトトギスがしっかりと頷くのを見てから、彼女はカイに優しく注意した。


「カイ君、気をつけなくちゃ、駄目よ。」


 セイラはそう言うと、赤く腫れ上がったカイの広い額を労るように、優しく口付をした。


 ホトトギスは予期せぬ展開に激しく動揺した。彼の愛しのセイラから口付けを勝ち取り、カイが得意然と自分を見つめることに激怒した。ホトトギスは、カイに報復攻撃に出たいのだが、それを恐れて、セイラがホトトギスに警戒の視線を向けていた。セイラは同じ手に二度かかるような馬鹿ではない。同じ手を使うわけにはいかなかった。ホトトギスは、カイへの憎悪で体を小刻みに震わして、如何なる対処をとるべきか考えていた。その時、馬車が何かを踏み上げてがくんと揺れた。ホトトギスは、これを天祐と心得、セイラの見ている前で、思いっきり窓に頭から突っ込んだ。ごつんと言う音を立てて、頭を窓に衝突させた。目から火が出るほどの衝撃であったが、そのお陰で大きな瘤を作ることが出来た。ホトトギスは、自らの窮状を訴えるために、円らな瞳に涙を湛え、セイラの顔を床に転がったままの状態で見上げた。


「あんた、何をやっているのよ。本当に馬鹿なんだから。これからは、もっと気をつけるのよ。」


 セイラは、ホトトギスの注意不足に呆れながら、そう言って彼を拾い上げた。


 そこまでは、彼の計算通りであったが、セイラは彼にキスをしてくれなかった。ホトトギスは、セイラの自分とカイとの扱いの差に憤慨しつつも、表面は取り繕ってセイラの顔を見上げながら、涙を浮かべた瞳でセイラに自分の窮状をさらに訴え続けた。しかし、セイラがそれ以上優しくしてくれないことを知ると、態度を豹変させて、


「どうせ、僕なんて、詰まんないホトトギスさ。僕なんて、僕なんて」


と我が身の不運を嘆きながら、泣き真似を始めた。


 何時ものことである。これくらいのことで、セイラは動じることがない。しかし、放っておくと何かと煩わしいので、彼女はホトトギスの機嫌を取るために彼の頭をぞんざいに撫で始めた。やっとセイラの関心を取り戻すことが出来て、ホトトギスは小踊りしたい気分であった。しかし、セイラが彼の酷く腫れ上がった頭を乱暴に撫で付けために、その筆舌を尽くせぬ苦痛から、ホトトギスの目から大粒の涙がこぼれ始めた。


 いつもならうっとりとした表情を浮かべるはずなのに、ホトトギスの異なる反応を怪訝に思い、セイラがホトトギスにこう尋ねた。


「あんた、涙なんか流して、一体、どうしたの。」


 セイラが撫でるのが痛いからなど、口が裂けても言えるはずがない。ホトトギスは、頭を激しく襲う痛みを堪えつつ、作り笑いを必死に浮かべた。


「セイラが僕を心配して、頭の傷をさすってくれるのが嬉しくて、涙を流しているの。」


 繊細な神経の持ち主なら、ホトトギスのこの皮肉に気づいたであろう。生憎なことに、豪胆なセイラはそのような神経を持ち合わせていなかった。彼女は「あっ、そう」と言ってさらに入念に彼の頭を撫で始めた。地獄の責め苦にも似たセイラの優しい心配りに、ホトトギスはその後も涙を流し続けた。


第23回 2変数の極値のまとめ [ネコ騙し数学]

第23回 2変数関数の極値のまとめ


 

これまで2変数関数の極値の求め方について説明してきましたにゃ。

で、ここで改めて2変数関数の極値に関する定理をまとめて書くにゃ。

まず、極値(極大値、極小値)の定義から。

関数f(x)=f(x,y)の定義内の点をa=(a,b)とする。正の数δを適当に小さくとれば、fの定義内の点xに対して、


になるとき、fは点aで(狭義の)極大という。


になるときfは点aで(狭義の)極小という。

ここで、斜体字のxx=(x,y)a=(a,b)だと思ってくださいな。斜体の太字は、ベクトルを表すんだにゃ。


で、次は2変数関数の極大・極小の判定に関する定理。

定理 (2変数関数の極値の判定)
関数f(x,y)を開集合Uで定義された関数とする。


(1)fが偏微分可能なとき、fが点(a,b)で極値をとるならば、


である。この条件を満たす点(a,b)停留点という。
(2)fが級の関数とする。点(a,b)が停留点ならば、


とするとき、


である。


極値の判別式であるDは、基本的に2次方程式の判別式と同じものなので、本によっては

で定義しているものがある。このとき、D<0になる時に極値が存在することになるので、ここは注意して欲しいにゃ。


2次不等式のところで、


としたとき、すべての実数でf(x)>0がになるとき、


になるという話をしたけれど、これと基本的に同じなんだにゃ。


判別式のacの前の係数が14で違うじゃないかと疑問に思うかもしれないけれど、極値の判定のときは


の時の判別式になっていて、


になるので、


になる。判別式で欲しいのは、正負の符号と、それが0になるかどうかだから、このD/4も判別式と呼ぶんだにゃ。

つぎは、f(x,y)で定まる陰関数y=φ(x)の極値に関する定理。

定理 (f(x,y)=0で定まる陰関数の極大・極小)
f(x,y)
級の関数、y=φ(x)f(x,y)=0で定まる陰関数であるとする。このとき、このときy=φ(x)aで極値b=φ(a)をとるならば、


であり、


である。

何でこうなるかは、極値をとる点(a,b)では


となり、極大のとき


で、極小のとき


となるから。
「−」がかかっているので、0との大小関係が変わっていることに注意して欲しいにゃ。



最後にラグランジュの未定乗数法の定理。

定理 (ラグランジュの未定乗数法)
f(x,y)
g(x,y)級関数とする。条件g(x,y)=0f(x,y)が極値をとる点(a,b)では、定数λがあって、次が成り立つ。



これも本によったら、

となっている場合があるので、注意をして欲しいにゃ。

式の形が少し違っているから面食らうかもしれないけれど、この2つの式は同じ内容を表しているにゃ。

この3つの定理を知っていれば、2変数関数の極値問題は、とりあえず、解けるはずだにゃ。

 


これまでにも何度も出てきているけれども、級関数というのはn回(偏)微分できて、その(偏)微分した関数が連続である関数のことね。



や三角関数、指数関数、対数関数は何回でも微分できて、その微分した関数は連続だから、理論的な問題以外では、級なんて気にすることないにゃ。


タグ:偏微分

セイラ2 1章の続き3 [セイラ2]


「挨拶は結構です。私はどうも堅苦しいのは苦手ですから。それよりも、どうぞお掛けになって下さい。」


 宰相は、三人が挨拶しようとするのをそう言って制し、三人に椅子に座るように勧めた。三人が腰を下ろすと、性急な彼らしくいきなり本題に入った。


「実は、今日皆さんに来て頂いたのは、事件の調査をして頂きたいからなのです。もちろん、無理にとは言いません。引き受けて頂けるのなら、詳しい話を致しましょう。その気がございませんのでしたなら、このまま帰って頂いて結構です。」


 一国の宰相とは思えないような慇懃な物言いであった。クロウリーとカイのことは知らないが、王国から多大な寄進を受けている神殿に所属するセイラはこの依頼を断るわけにはいかなかった。少なくとも、セイラには命令に等しかった。セイラは、カイとクロウリーがどういう反応を示すか確かめるため、二人の様子を窺った。二人がこの話を拒絶する意志がない事を顔色から読み取ると、代表して仕事を引き受けることを宰相に告げた。


「そうですか、それは良かった。実を言いますと、国の到る所でゾンビが現れていて、困っているのですよ。今のところ実害はないのですが、今後どうなるか分かりませんし、それ以上に民衆の動揺を押さえなければなりません。どうして急にゾンビが現れたのか、皆さんに調べて頂きたいのです。でないと、ゾンビを退治して良いものかどうかも分かりませんから。ゾンビを退治したら、国に更なる禍が降りかかると言うのでは、洒落になりませんから。」


 宰相はそう言うと、一人大きな笑い声を上げた。そして、側に控える男に小さな声で何やら指示を与えると、一行に向き直り


「詳しいことはこの男にお尋ね下さい」


と言った。そして、控えている男に「皆さんを案内するように」と命じると、宰相は再び執務に取りかかった。


 一行はその男に執務室の隣の部屋に案内された。ホトトギスは、テーブルの上にお菓子があるのを見ると、嬉しそうにセイラに「わーい、お菓子が一杯ある」と耳打ちした。セイラは、ホトトギスを無視して、男の勧めに従ってソファーに腰を下ろした。そして、男に質問した。


「何時から、ゾンビが現れるようになったのですか」


 当然の質問であったが、男は「私は何も詳しいことは存じません」と答えると、その部屋から逃げ出していった。呆気にとられているセイラに、クロウリーが


「宰相に騙されたみたいですね。いやまあ、あの方はますます人が悪くなっているみたいですね」


と話しかけてきた。前回、仕事を受けたときにも、同じような目に遭わせられた経験があった。セイラはその時のことを思い出し、クロウリーに頷き返した。


「何するんだ、この馬鹿鳥は。」


 突然のカイの怒声に驚き、セイラはホトトギスの止まっているはずの自分の右肩を見た。しかし、そこにはホトトギスの姿がなかった。彼女はそのことを訝りつつカイのほうに視線を向けた。すると、ホトトギスがテーブルの上で口を大きく開けてカイを威嚇していた。彼女は何が起きたのか理解が出来ずカイに尋ねようとした。


「このお菓子は全部俺のものだ。誰がお前なんかにくれてやるもんか。」


 ホトトギスはそう言うと猛烈な勢いでお菓子を貪り始めた。瞬く間にお菓子の半分を平らげたが、余りに慌てて食べ過ぎたために、お菓子を喉に詰め込んだらしく、咳き込み始めた。


「あんまり欲張るから、そんな事になるのよ。」


 セイラはホトトギスを注意しながら彼にお茶を飲ませ始めた。ホトトギスは、セイラの優しい心性に感動し、感謝の言葉を口にした。


「セイラ、有り難う。」


 そう言いつつも、食い意地の張ったホトトギスは、翼を開き、自分のお菓子をカイから守っていた。カイが挑発するようにお菓子に手を伸ばすと、口を大きく開き、唸り声を上げ始めた。


 セイラはその様子を呆れた顔で見ていたが、彼が最近満足な食事をしていないことを思い出した。


「カイ君、我慢して。こいつ、このところご飯を食べてないのよ。」


 ホトトギスは、満足そうにカイに頷いてみせた。そして、再び猛烈な勢いでお菓子を食べ始め、瞬く間に食らい尽くした。ホトトギスは、その後、嘴を器用に使いお茶を飲み始めた。


 そうこうしているうちに、部屋に男が入ってきた。


「支度が出来ました。皆さん、出発の準備をしてください。」


 男は「出発の準備」と言ったが、一行は宰相に呼び出されただけで、旅の支度など何もしていなかった。セイラが怪訝そうな顔をして男を見ると、その男は


「心配は不要です。宰相が皆さんの旅支度を整えておりましたから」


と答えた。セイラが宰相の手回しの良さに驚いていると、何時の間にか彼女の右肩に止まっていたホトトギスがセイラに話しかけてきた。


「セイラ、また、一緒に旅に出られるね。」



第22回 違う方法で解く [ネコ騙し数学]

第22回 違う方法で解く



問題1 のとき、x+yの最大、最小値を求めよ。

【別解1】

x+y=kとおき、y=k–xに代入する。


xは実数なので、上のxの2次方程式は実根を持たなければならないにゃ。

で、判別式を使うと、

でなければならない。

よって、最大値は√2、最小値は−√2

【別解2】

なので、x=cosθy=sinθとするにゃ。

よって、最大値は√2で、最小値は−√2


この他にも解答は幾つか考えられるけれど、このあたりが代表的なものなんだろう。
ちょっと毛色の違う解答を示すならば、コーシー・シュワルツの不等式

をつかって、

とすることもできるにゃ。



問題2 のとき、の最大値と最小値を求めよ。
【別解1(?)】


だケロ。

ここで、相乗平均≦相乗平均

を使うにゃ。

とすると、

だから、

となるにゃ。

で、


なので、


となる。

等号が成立するときは

なので、

それで、

このことから、

となり、・・・。
相乗平均≦相加平均を使うときは、これを満たすxとyなどの値が存在することを示さないといけないにゃ。問題によっては、そんなxとyが存在しないことがあるので。


【別解2(?)】


として、


と正弦関数の2倍角の公式を使ってもいいにゃ。

そうすれば、

というのがすぐに出てくるケロ。

だから、・・・。

前回やった程度の問題ならば、ラグランジュの未定乗数法や微分積分すら使う必要がないんだにゃ。


「ラグランジュの未定乗数法をどのように使うか」の練習問題だったワケなんだにゃ。

という制限がついている時、x=acosθy=asinθとすると、1変数関数の最大、最小問題に直せるので、こうした方が一般的に計算や議論が楽だにゃ。


ならば、x=acosθy=bsinθとするにゃ。
のときは、

と考え、


とすればいいにゃ。


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今日のアニソン プラネテス [今日のアニソン・アーカイブ]

今日のアニソンは、PLNETES(プラネテス)だにゃ。

同名のアニメの最終話で挿入歌として使われた曲です。




歌詞が素晴らしいので、
http://www.kasi-time.com/item-35938.html
などを是非ご覧になってください。


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セイラ2 1章の続き2 [セイラ2]


 依頼


 ホトトギスに催促されて、セイラは神殿を出て宰相の待つ王城へと向かった。朝まだ早いこともあり、通りには人の姿はまばらではあったが、住民の胃袋を満たす朝市が店の支度をしていた。セイラは何気なくその喧噪を眺めていたが、右肩に止まるホトトギスが朝市の商人相手の食堂を目敏く見つけセイラに話しかけてきた。


「セイラ、あそこに食堂があるよ。あそこに行って、ご飯を食べようよ。」


 ホトトギスが空腹であることは知っていたが、宰相からの呼び出しであり、寄り道をするわけにもいかない。それに、彼女は朝食をとったばかりであり、ホトトギスの朝食の相手をする気にもなれなかった。そこで、セイラは、ホトトギスに連れなく「我慢なさい」と返事した。ホトトギスが不平を言うと、「宰相様の所に行くと、お菓子が一杯あるから、それまで待てないの」と言って、彼を宥めすかした。ホトトギスは、セイラが自分を子供扱いするのに憤慨したが、空腹には勝てないらしく、「本当にお菓子があるんだね」と言って納得した。


 王城に着くと、早朝だと言うのに、入り口の所で彼女を近衛の兵士が待っており、彼女はその兵士に控え室へと案内された。


 ホトトギスは広い室内を見回しお菓子の所在を確かめた。そこにお菓子がない事を知ると、早速セイラに抗議した。


「セイラ、何処にもお菓子がないよ。まさか、僕を騙したんじゃないよね。」


 セイラは緊張感や落ち着きといったものがないホトトギスに呆れつつ、


「煩いわね。少し静かになさい」


と怒鳴ってから、椅子に腰を下ろした。ホトトギスはその間も「嘘つき」とか「詐欺だ」と喚いていたが、セイラは彼の言葉を聞き流していた。それから暫くして、一人の少年が部屋に入ってきた。ホトトギスはその姿を見ると、敵意を剥き出しにして少年を威嚇し出した。


「餓鬼が、一体何しにここに来たんだ。まさか、俺のセイラにちょっかいを出しに来たんじゃないだろうな。そうだとしたら、ただじゃおかないからな。」


 ホトトギスの物騒な言葉を聞き、セイラは、どうしてこの二人は仲良く出来ないのだろうと思いながら、ホトトギスを叱りつけた。


「あんたは、どうしてカイ君をそんなに毛嫌いするのよ。少しは仲良く出来ないの。」


 セイラの言葉であるが、ホトトギスはこの言葉を呑むわけにはいかなかった。彼にとり、カイはセイラとの恋の最大の障害であり、ライバルであった。仲良くするなど出来るはずがなかった。ホトトギスは剣呑な目つきでカイを睨み付けた。カイがセイラの隣に腰を下ろすと、口を大きく開けて威嚇した。


「カイ君も、宰相様に呼ばれたの。」


 彼女の質問にカイは頷いて答えてきた。セイラはそれを見て、またしても自分達がかなり危険な仕事を依頼されることを確信した。それを裏づけるように、魔術師のクロウリーがやや遅れて部屋に入ってきた。


「あれ、カイ君とセイラさん、こんなに朝早くから、一体、どうしたんですか。」


 人を食ったような質問を、クロウリーが二人にした。セイラは、うんざりした表情を浮かべて、クロウリーに


「クロウリーさん、もう少し真面目に話してください。どうして、クロウリーさんは何時もそうなんですか」


と言った。クロウリーは恐縮したような表情をセイラに見せ「済みません。つい癖で」と謝りながら、カイの隣の席に腰を下ろした。そして、セイラの耳に届く声でカイに尋ねた。


「カイ君、セイラさんは随分機嫌が悪いみたいですね。何かあったのですか。今日はあの日なんでしょうか。」


 まだ十二歳の純情少年のカイは、クロウリーの言う「あの日」が何を意味するのか理解できず、きょとんとした表情を浮かべていた。セイラは、計算し尽くされたクロウリーの言動に辟易としながらも、純情なカイのために声を荒げた。


「クロウリーさん、カイ君の前で変なことを言わないで下さい。」


「そうだ、そうだ。クロウリーが全部悪い。俺の腹が空いているのも、みんな、お前のせいだ。」


 ホトトギスは空腹の余りにクロウリーにとんでもない言い掛かりをつけた。彼のとんでもない言い掛かりに三人の気が逸れている隙を突き、憎きカイに嘴の洗礼を与えた。


「何するんだ、この馬鹿鳥。」


 カイはホトトギスに小突かれた頭を押さえながらホトトギスに抗議した。よほど痛かったのであろう、目にはうっすらと涙が浮かんでいた。セイラはその姿を見てホトトギスを怒鳴りつけた。


「あんた、一体カイ君に何をしたのよ。」


 ホトトギスは涼しい顔をして「僕は何もしていないよ」と答えた。現行犯でない限り、狡猾なホトトギスの犯行を証明することは困難であった。犯行を目撃されたとしても、ホトトギスは様々な詭弁を有し、決して犯行を認めようとはしない。セイラはこれまでの経験でそのことを痛いほど知っていた。セイラは疑わしそうな目をして「本当に、あなたじゃないのね」と尋ねた。ホトトギスは心外そうな表情をして


「僕は絶対そんな事はしない。僕はカイを実の弟のように思って、何時も可愛がっているんだから」


と言うと、嫌がるカイの頭を右の翼で撫で始めた。彼の犯行の現場を目撃していない以上、これ以上言っても水掛け論になる。セイラは「本当に、あなたじゃないのね」と念押しして、それ以上の詮索を断念した。


 そうしたことを何度も繰り返しているうちに、セイラを部屋に案内してきた兵士が「失礼します」と言って、部屋に入ってきた。


「宰相が皆様方をお待ちしております。どうぞこちらへ。」


 兵士はそう言うと一行を宰相の執務室へと案内した。執務室に着くと、一行に「中でお待ちしております」と言い残し、兵士は去っていった。前回の仕事で何時しかリーダーになってしまったセイラが一行を代表して扉をノックした。すると、中から宰相が一行に入るように命じ、一行は恭しく宰相の執務室に入っていった。



第21回 ラグランジェの未定乗数法 [ネコ騙し数学]

第21回 ラグランジェの未定乗数法


たとえば、x+y=1のとき、

  

の最小値を求めよという問題があるとするにゃ。

これやy=1–xとyを消去すれば、
  

となるので、x=(y=)1/2のときに最小で、最小値は1/2となることがわかるにゃ。

微分を使って、
  

などから、最小値を求めてもいいにゃ。

だけど、
のとき、の最小値を求めよ

というような問題だと、xやyを消去してというわけにはちょっといかない。


しかし、ラグランジェの未定乗数法という方法を使うと、こうした制限付きの極値問題や、最大値・最小値の問題を解ける場合がある。

だから、ねこ騙し数学においても、ラグランジュの未定乗数法をやろうじゃないか、という訳だにゃ。


仮にφ(x,y)=0という制限がついていたとするにゃ。φ(x,y)級で、ならば、陰関数定理より、φ(x,y)=0で定まる陰関数y=ψ(x)が存在するにゃ。

だとすれば、
  

となり、これをxで微分すれば

  

で、陰関数定理から

  

となるから、

  

となるにゃ。

で、g(x)x=aで極値をとるとするとg'(a)=0なので、b=ψ(a)とすると、

で、

  

とすると、

  

さらに、ならば、

  

となり、

  

も成立するにゃ。

  

が成立するのは、(A)より

  

となり、なので、

  

で、

  

でもある。

未知数はa、b、λの3つ、方程式は①、②、③の3本だから解けるはずだ、というわけだケロ。

本当に、このラグランジュの未定乗数法で解けるか、最初の例でやってみるにゃ。

  shiki-21-01.png

とするにゃ。

で、

  shiki-21-02.png
として、これをxyでそれぞれ偏微分すると、

  shiki-21-03.png

となるにゃ。

この上の式を下の式で引けば、x=yになるので、x+y–1=0と合わせれば、x=y=1/2となり、このことから、f(x,y)の極値(?)が

  shiki-21-02.png
という訳だにゃ。



問題1 shiki-21-05.pngのとき、x+yの最大値と最小値を求めよ。
【解】

  shiki-21-06.png
として、ラグランジュの未定乗数法を用いる。
  shiki-21-07.png

よって、

  shiki-21-08.png

これを

  shiki-21-05.png

に代入すれば、λは出てくるけれど、欲しいのはλじゃなくて(x,y)だから、x=yを使えば

  shiki-21-09.png

となり、このことから

  shiki-21-10.png

となり、x+yの最大値が√2、最小値が−√2であることがわかるにゃ。



問題2 shiki-21-11.png のとき、shiki-21-12.pngの最大値、最小値を求めよ。
【解】

  shiki-21-13.png

とするにゃ。

  shiki-21-14.png

このことから、

  shiki-21-15.png

そして、

  shiki-21-16.png

④、⑤、⑥の連立方程式を解けばいいんだけれど、これは問題1の時と違ってちょっと厄介なんだケロ。

④から
  shiki-21-17.png
これを⑤に代入すると、
  shiki-21-18.png

この両辺に−2をかけて整理すると、

  shiki-21-27.png

になる。

で、
  shiki-21-20.png

ならば、これで両辺を割ることが出来て、x=0となり、そして、y=0となるにや。

でも、これは⑥式を満たさないから、
  shiki-21-28.png

でなければならない。
で、このλに関する②次方程式を解けば

  shiki-21-21.png

となるにゃ。

で、λ=−1を④に代入すると、
  shiki-21-22.png

これを⑥式に代入すると、

  shiki-21-23.png

λ=−5を④式に代入すると

  shiki-21-24.png

これを⑥式に代入すれば、

  shiki-21-25.png

となる。
この4つを

  shiki-21-26.png

に代入すれば最大と最小値は出てくるにゃ。

最大値は20、最小値は4になるはずだにゃ。

  shiki-21-29.png
の時が最大で20、

  shiki-21-30.png

の時が最小で4になるはずだにゃ。

線形代数なんかを知っている人は、④と⑥の連立方程式を解く時、これが(x,y)=(0,0)の時

  shiki-21-31.png

でなければならない、とするとオシャレにゃ。


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シベリア出身の世界的バリトン歌手 病気からカムバック [今日のクラシック]

シベリア出身の世界的バリトン歌手 病気からカムバック
2015年09月28日 00:54

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シベリアの町クラスノヤルスク出身の世界的なバリトン歌手、ドミトリー・ホヴォロストフスキーさんが、病気からカムバックした。今年6月、52歳のホヴォロストフスキーさんは脳腫瘍と診断され、英国の医師たちによる治療を受け、最近、放射線治療が終了した。

ホヴォロストフスキーさんは25日、米ニューヨークにあるメトロポリタン歌劇場で復活を果たした。ホヴォロストフスキーさんは、ジュゼッペ・ベルディーのオペラ「イル・トロヴァトーレ」に出演。会場は満席だった。「イル・トロヴァトーレ」には、ロシア・オペラ界のもう1人のスター、アンナ・ネトレプコさんも出演している。メトロポリタン歌劇場は、ホヴォロストフスキーさんの復活を、白いバラと永遠に続くかと思われるほどの拍手で歓迎した。

http://jp.sputniknews.com/culture/20150928/962648.html

クラシックの歌手としては珍しくヴィジュアル系だね。52歳という年齢のことを考えると、ヴィジュアル系と表現するのは失礼なのかもしれないけれど。

この時の上演がYouTubeに上がっていたので、ご紹介しますにゃ。






内緒なんだけれど、オレ、オペラが苦手なんだケロ。
とてもじゃないけれど、オペラを全曲通して聞くなんてことは、出来ない。
モーツアルトの「フィガロの結婚」、「ドン・ジョヴァンニ」、ワーグナーの「オランダ人」や「トリスタンとイゾルデ」くらいならば何とか聞けるけれど、オペラは辛いものがある。
時間的な問題じゃなくて、体が受け付けない、拒絶反応を起こす。
合唱曲は好きなんだけれど、オペラとか、クラシックの(ソロの)歌曲は駄目なんだにゃ。

Tastenkastenさんに怒られるかもしれないけれど、苦手なもんは苦手なんだからしょうがないにゃ。
(イタリア)オペラは嫌いんだケロ。
ネムネコは、隠れワグネリアンだケロ。
ということで、
ワーグナー作曲「タンホイザー」から夕星の歌をセレクトしたにゃ。



何と美しい♪
イタリアのバタ臭いオペラなんか聞けるか!!

Hvorostovskyの声はちょっと硬質すぎてこの曲に合わないと思うので、F.ディースカウのこれで耳直しを・・・。



タグ:クラシック
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セイラ2 1章の続き1 [セイラ2]

呼び出し


 ホトトギスは、その後、セイラの寝台の中で大人しく朝を迎えた。セイラの枕元で、入念に毛繕いをしてから、自分の姿を一度確認した。そして、セイラに朝が来たことを知らせるために、彼女に声をかけた。


「セイラ、朝だよ。早く、起きてよ。」


 しかし、セイラは目を覚まそうとはしなかった。ホトトギスは、もう一度彼女に声をかけた。やはり、彼女は目を覚ます気配を示さなかった。ホトトギスは焦れて、今度は、セイラの額を嘴で優しく突き始めた。くすぐったかったのであろう、今度はセイラは目を覚ました。そして、自分の顔のすぐ目の前にホトトギスの顔があるのに驚き、


「一体、あんた、何をしているのよ」


と怒鳴りつけ、そして、ホトトギスの頭を思いっきり叩いた。


 ホトトギスは、痛そうに右の翼で頭を押さえて、親切を仇で返すようなセイラの行動に憤慨し、挑発的な視線で彼女の顔を見た。その瞬間、今度は拳が襲ってきた。ホトトギスは、目に涙を浮かべて、彼女の乱暴に抗議した。


「セイラが寝坊するといけないと思って、僕はただセイラを起こそうとしただけだよ。それなのに、何でぶたれなくちゃいけないのよ。」


 彼の主張は一応筋が通っていた。しかし、ものには限度があった。起床時間の一時間前に起こしておいて、彼の主張には明らかに無理があった。セイラは目を擦りながら、ホトトギスを睨み付けた。そして、もう一度彼を殴りつけた。


「何が寝坊するといけないよ。あんたはただ遊んで欲しいだけでしょうが。よくまあ、そんなに勝手なことが言えるもんだわ。開いた口が塞がらないわよ。」


 彼女はそう言うと、もう一度ホトトギスを殴りつけた。それから、寝直そうかと一瞬思ったが、すっかり目が覚めてしまっていた。寝るわけにもいかず、寝台から物憂そうに起き出した。そして、着替えをするためにホトトギスに


「良い、私が良いって言うまで、あっち向いて目を瞑っていなさい」


と命じた。ホトトギスは「はあい」と言って、セイラの言い付けに素直に従い、彼女に背を向けて目を閉じた。セイラは、それを確かめてから、着替えを始めた。とは言え、奔放な性格のホトトギスを完全に信用することは出来ず、着替えの最中にも監視の目を光らせていた。そして、着替えが終わると「もういいわよ」と彼に声をかけた。


 ホトトギスは、振り替えると同時に舞い上がり、彼の指定席であるセイラの右肩に舞い降りた。セイラはそれを確認すると礼拝室に向かった。礼拝室に入ると、宿直の神官が敬虔に祈っているのが目に入ってきた。彼女は、その神官に邪魔にならないように、物音を立てないようにして礼拝室に入った。そして、彼女から離れたところで、セイラも神に祈り始めた。


 ホトトギスは、せっかくセイラを起こしたと言うのに、予期せぬ方向に事態が展開し、少し当惑した。しかし、立ち直りの早い彼は、すぐさま自分の今後の行動について考え始めた。


 礼拝室という場所柄、いくら奔放なホトトギスも騒ぐわけにはいかなかった。別段、彼が礼拝室を神聖な場所と思っているわけでなく、神官セイラの立場を慮ってのことであった。冥界からの使者とされるホトトギスは、この神殿に奉られている女神を直接見たこともあるし、それどころか、幾度か口を利いたこともあった。神など彼は屁にも思っていなかったが、暇潰しにセイラの真似をして神に祈ることにした。


 羽根の構造上絶対に不可能であるはずなのだが、真っ当な生き物ではないホトトギスは、セイラの真似をして、両方の翼を胸の前で合わせて、処女神に敬虔に祈り始めた。もちろん、彼が祈っているのは、セイラとの恋愛の成就であった。


 セイラとホトトギスに遅れて、神官であるので信仰に篤いと言うのも妙な話であるが、信仰に篤い神官が次々と礼拝室に入ってきた。彼女達は、セイラの真似をしてホトトギスが敬虔に神に祈っている姿を見て、思わず黄色い歓声を上げた。


「見て、見て。ホトトギスちゃんが祈っているわよ。かわいい。」


 その瞬間、宿直の神官が険しい視線で騒ぎ始めた彼女達を見た。彼女達は、その視線に気づき、ばつの悪い顔を暫くしていたが、やがて何事もなかったような顔をしてセイラに近寄り、その一人が彼女に耳打ちをした。


「ホトトギスちゃんはきっと神のお使いなのよ。そうじゃなければ、神様にお祈りする鳥なんかいるはずないものね。」


 ホトトギスが魔族であるなど言うわけにもいかず、セイラは作り笑いをして「そうかもね」と答えた。そして、再び祈り始めた。


 起床の鐘が鳴った時、礼拝室に一人の神官が入ってきた。その神官はセイラに近づくと、「神殿長のお呼びです」と彼女に耳打ちした。セイラは何だろうと訝りながら、彼女の後に従った。そして、礼拝室から出たときに、


「ひょっとして、ホトトギスのことがばれたのかしら」


と思った。


 ホトトギスの姿はしているが、彼はれっきとした魔族であった。その魔族を神聖なる神殿に招き入れ、汚したとなれば、彼女の神殿からの追放は必至であった。神殿から追放されるだけならまだ良いが、神官の資格は剥奪され、神殿への出入りの禁止は免れえなかった。セイラは、俄に狼狽し出した。どうしようと考えているうちに、神殿長の部屋の前に着いてしまった。セイラは、覚悟を決めて神殿長の部屋に入っていった。


 神殿長は、神殿で評判になっているホトトギスを一瞥すると、セイラに椅子に座るように勧めた。神殿長は、執務用の机に座ったまま、彼女に話しかけた。


「随分変わった鳥だそうね。何でも、オウムの親戚で、人の言葉を話せるそうじゃない。」


 セイラは、神殿長に何と答えたら良いのか分からず、取り敢えず「はい」とだけ答えておいた。そして、緊張した面持ちで彼女の顔を見た。


「今日、あなたをここに招いたのは、他でもないの。宰相様があなたにお会いしたいのだそうです。朝食を取ったら、すぐに宰相様を伺うように。」


 セイラは、神殿長に呼ばれた理由がホトトギスのことでない事を知り安堵した。「畏まりました。それでは失礼します」と言って、立ち去ろうとしたとき、神殿長が彼女を呼び止めた。セイラがもしやホトトギスの正体が露見したのではと思い、恐る恐る神殿長の顔を覗き込んだ。


「なんでも、その鳥は見事な舞いもするそうね。やって貰えないものかしら。」


 予想外の神殿長の言葉を聞き、セイラは「へっ」と情けない声を上げた。神殿長のたっての要求を断るわけにもいかず、セイラは右肩に止まるホトトギスを見ながら彼に小さな声で尋ねた。


「どうする。あんた、神殿長のために踊ってくれる。」


 「神殿長のために」という言葉は気に入らなかったが、ホトトギスは二つ返事でセイラに了承した。ぴょんと神殿長の執務机に飛び降りて、そこで舞いを踊り始めた。舞いが終了すると、悪ふざけが過ぎる観もあったが、彼は礼儀正しく神殿長にお辞儀をした。そして、何事もなかったかのように、セイラの右肩に飛び乗った。


 神殿長は、ホトトギスの一連の所作に感心し、


「礼儀正しい鳥なのね。本来なら認めるべきではないのでしょうが、ここまで見事な舞いを見せられて、認めないわけにいけませんね。特別に飼うことを認めましょう。良いこと、生き物なのですから、大切に飼うんですよ」


と言って、ホトトギスを飼うことを正式に彼女に認めた。


 セイラは、神殿長のその言葉を聞き、安心した。そして、「有り難うございます」と言うと、神殿長室から逃げ去るように出ていった。


 ホトトギスは、正式に神殿の一員になり、廊下を足早に歩くセイラに話しかけた。


「ねえねえ、セイラ。僕の朝食用意してあるかな。」


 神殿に来てからと言うもの、ホトトギスは満足に食事を取っていなかった。鳥に成り済ましているのだから、人間の食事を取るわけにはいかなかった。神殿と言う極めて厳格な場所であり、セイラも彼の食料を調達するのに苦労していた。なりは小さいが、彼は健啖家であり、一人前の食料を必要としていた。彼を可愛がる神官達から、おやつ程度のものは与えられていたが、とても彼の胃袋を満足させられる量ではなかった。おかげでホトトギスは何時も空腹を託っていた。時にセイラの目を盗み、神殿のお供えものを盗み食いなどして、空腹を癒していた。そんな彼にとって、それは切実な問題であった。


「あるわけないでしょうが。あんまり無理言わないでよ。大体、あんたは真っ当な生き物じゃないんだから、我慢なさい。それに、仕事だから、暫くは神殿から離れならるわ。その時に、お腹一杯食べさせてあげるわよ。」


 セイラは、そう言ってホトトギスを宥めすかした。食堂に彼を連れて行くわけにもいかず、彼を部屋に残して、彼女一人で食堂に向かった。部屋に残されたホトトギスは、空腹を我慢しながら、外の気色を眺めた。


 セイラと知り合った頃は晩秋であったが、今はすっかり冬景色になっていた。本来夏の鳥であるホトトギスは寒さに弱い。彼は急に寒さを憶え、身震いしてから、セイラが眠っていた寝台に潜り込んだ。セイラが寝台を出てから一時間以上の時間も経過していたが、まだ寝台には彼女の温もりが仄かに残っていた。ホトトギスはその温もりを楽しんでいるうちに睡魔に襲われた。彼は知らず知らずのうちに眠り始めた。


 食堂から帰ってきたセイラは、部屋にホトトギスの姿がない事を怪訝に思って、暫く辺りを見回した。もしやと思い、寝台の中を覗いて見ると、ホトトギスが幸せそうな顔をして眠っていた。起きている時には、彼女を絶えず悩ませ続けていたが、こうして無邪気に眠る彼の姿を見ていると、自然と優しい気持ちなってきた。セイラは彼の頭を一二度優しく撫でてやった。ホトトギスは、それで目を覚まし、人間臭く右の翼で目を擦りながら、「セイラ、おはよう」と言った後、彼女の右肩に飛び乗った。


「ねえ、ねえ。宰相とか言う奴の所に行くんでしょう。僕も連れてってくれるんでしょう。セイラ、早く行こう。」


今日のアニソン2 Daydream Cafe [今日のアニソン・アーカイブ]

今日は中秋の名月、十五夜ですね。

ということで、急遽、今日のアニソン2。




アニメのOPバージョンは



月といえば、永遠亭。




さらにウサギ尽くしということで






このウサギたちのご主人様のこの2曲を付け加えておこう♪