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セイラ2 12章の続き3 [セイラ2]

 ホトトギスの言葉を裏付けるように、街の内部に進むにつれ、化物の気配が強くなってきた。セイラたち一行を餌か何かと勘違いしたのであろう、中には、それまで身を潜めていた古代遺跡の建造物から姿を現し彼女達に襲い掛かる物さえいた。とは言え、自らの実力のほどを弁えない愚か者で、呆気なくカイの刀の錆になったり、ホトトギスにいとも簡単に粉砕された。

 弱い敵にしか遭遇しないということは喜ぶべき事柄であったが、セイラは、やがて少々物足りなさを憶え、先頭を歩くホトトギスに声をかけた。


「ねえ、ホトトギス。もっと強い敵はいないの。これでは体が鈍ってしまうわ。」


「弱い敵しかいないってことは、いいことでしょう。あんまり贅沢を言ってはいけないよ。」


 ホトトギスは、小さな子供を言い含めるようにそう返答した後、突然、立ち止まり彼女の方を振り返った。


 ホトトギスの顔は何時になく真剣であった。余人であったなら、鳥の表情の変化を読み取ることはできないであろう。しかし、ホトトギスに二十四時間付き纏われることになったセイラは、何の苦労をすることなくホトトギスのその顔色の変化を見取ることができた。セイラは、ホトトギスの何時になく緊張した表情を見て、きっと何らかの厄介事が身近に迫っているに違いないと確信し、顔を微かに強張らせて、ホトトギスにこう尋ねた。


「何かがいるのね。それでどんな奴がいるの。」


「何を言っているの、セイラ。」


 ホトトギスは、セイラにそう返答した後、右の翼をお腹に当てて、時間を計測した。黒くて厚い雲が空一面を覆っており、殆ど日が射し込まない。しかも、一面の雪景色であり、時を知らせるような存在は何処にもなかった。そのために、彼は、原子時計並みの精度を有する彼のお腹に手を当て、計時しただけであった。


「僕の腹時計によると、もう、お昼御飯の時間だよ。このまま遺跡を調べることも重要だろうけれど、昔から、腹が減っては戦ができぬと言うじゃない。ここは、遺跡の調査を一先ず中断し、疲れた体を休めるとともに栄養補給をはかるのが賢明な策だと思う。セイラもそう思うでしょう。」


 ここのところ馴れてきたとは言え、都会育ちのセイラにとって慣れない雪の上を歩く行為は、予想以上の重労働であった。しかも、今回はこれまで荷物を運んでくれていた「馬」がおらず、セイラたち自身がが必要な物資を運搬しなければならなかった。数々の事件の連続で自分の疲労のことなどすっかり忘れていたが、セイラはホトトギスのその言葉で自らの体の疲労に気付いた。そして、足を止めると「それもそうね」と言って、あたりを見回し食事に適当な場所を探し始めた。


 幸いなことに、今、セイラ達のいる遺跡は、古代遺跡としては珍しく殆ど荒らされていなかった。大森林のさらに奥にあるという地理的な条件ゆえに人にその存在が知られなかったため遺跡荒らしの盗掘から免れたのかもしれないわね、と暢気なことを考え、適当な場所を物色していると、ホトトギスが彼女の心中を察したようでこう話しかけてきた。


「何で、この遺跡はこんなに綺麗なんだろうね。普通、古代遺跡と言うと、古代の大戦争の主要な戦場で、原形を止めないほど完膚なきまで破壊されているものだよ。それなのに、どうして、この遺跡だけが綺麗なんだろう。伝染病が蔓延し、この街の住人は全て死に絶えたのか、それとも、何かこの街にいられない事情ができ、この街を放棄して何処かに逃げ去っていったのであろうか。いやあ、本当に不思議だね。」


 ホトトギスはそう言った後、暫くして両方の翼をぽんと打ち合わせた。


「そうか、分かった。きっと、この街の住民の全てがやむを得ない事情で高利貸から大金を借りたものの、それを返済できなくなり夜逃げしたんだ。だから、この遺跡には、古代人の遺骨もなければ、生活を感じさせる物が見付からないんだ。夜逃げの時に鍋釜などの家財道具も全て持ち出したから、この街にはめぼしい物が何もないんだ。なんだ、そういう理由であったのか。どうして、こんな簡単なことを今まで気付かなかったのだろう。」


 確かに、ホトトギスの話はこの遺跡がもぬけの殻になっている説明にはなっていたが、この遺跡に住んでいた住民の全てが高利貸からの借金を抱えていたとは信じられず、また、それが理由で家財道具を全て携えこの町から出ていった、とは考え難かった。


「馬鹿なことを言っていないで、あそこに行くわよ。」


 セイラは、ホトトギスの背を軽く蹴飛ばした後、前方の大きな建物を指差し、そこを目指し歩き始めた。



今日のアニソン、「セーラースターソング」 [今日のアニソン・アーカイブ]

今日のアニソンは、「美少女戦隊セーラームーンスターズ」から「セーラースターソング」です。



見ているこっちのほうが恥ずかしくなるので、この手のアニメは死んでも見ないにゃ。
セーラムーンの実写版は見ていたのだけれど、アニメは一度たりとも見たことがない。

そして、この1曲。



この動画は違和感があるケロ。こんなのはアリスじゃない!!


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第15回 3重積分の応用・体積 [ネコ騙し数学]

第15回 3重積分の応用・体積


高校の数学で、立体Ωの体積Vは、zにおけるΩの断面積をS()とすると、

  

で求められると習ったと思うにゃ。


立体Ω

  

で与えられるとすると、

  

となる。
はzにおける立体の断面積になるので、この3重積分の計算は立体Ωの体積を計算したことに相当する。


ということで、次の定理がえられる。

定理
関数f(x,y)g(x,y)が積分領域Dで連続で、f(x,y)≦g(x,y)であるとする。このとき、D上のz軸方向の柱体z=f(x,y)z=g(x,y)が囲むΩの体積Vは次で与えられる。
  

【証明】

立体Ω
  
縦線集合とあらわせるので、体積Vは3重積分を累次化すると

  

となる。


問題1 放物面と曲面で囲まれた体積を求めよ。

【解】

グラフにするとこんな感じになる。

zu-15-01.jpg

分かりづらいと思うけれど、求める立体Ω

  

だにゃ。

x=0y=0を入れると、曲面の上下関係がわかると思う。

で、D

  

なので、

  

となるのだけれど、こんな計算はしたくない。


そこで、

  

となるので、少し工夫し、x=√2rcosθy=rsinθと置くと、D

  

になる。

この時のヤコビアンJ
  
から、J=√2rとなり、よって
  

計算のテクニックですね。

問題2 2平面、z=0z=2–yと円柱面で囲まれる部分の体積を求めよ。

【解】

立体Ω

  

となる。

で、

  

となり、これをお決まりの極座標で変換すると、積分領域は

  

となるので、

  


タグ:重積分

セイラ2 12章の続き2 [セイラ2]

 廃虚

 これまでセイラ達が訪れた古代遺跡とは異なり、この遺跡の街は、これといった被害を受けていなかった。セイラは、注意深くあたりを窺いながら、整然としたこの街の中を歩き出した。


 雪に街がすっぽり埋もれているせいもあるだろうが、街が太古のまま保存されているにもかかわらず、人気が全く感じられないために、これまで訪れたどの遺跡より、荒涼とした物が感じられた。魂が抜け出た体が長年の風雪に曝されながらも朽ちることなく今まで残っているかのような、そんな感じがこの街から感じられた。しかも、雪が一切の音を吸収し、彼女達の雪を踏みしめる音以外あたりから音が聞こえることがなかった。全くの沈黙から逃れるように、セイラは先頭を歩いているホトトギスに声をかけた。


「どう、ホトトギス。あたりに敵が潜んでいる気配がする。」


「一杯という程ではないけれど、かなりの量の化物がこの街にいるみたいだね。まあ、大概の奴は猪並みの戦闘力しか有していない、弱っちい奴等だけどね。でも、何体か、かなりの強敵もいる。」


 ホトトギスは、セイラにそう返答した後、突然足を止め、「あれみたいにね」と言って、空を指し示した。セイラは、半信半疑であったが、彼の指し示す方向を見た。ライオンか何かの体に翼を付けて悠然と飛んでいるのを見かけ、その正体を彼に尋ねた。


「何のなのよ、あれ。ひょっとして、また、キメラなの。」


 だが、セイラのその疑問に答えたのは、魔術師のクロウリーであった。いつも通り勿体をつけた口調で、「キメラは頭が三つですから、どうやら違うみたいですね。私が見るところ、あれは魔獣の王である、グリフィンのようです」と返答した。だが、即座に「グリフィンと言うのは、頭と翼が鷲で、体がライオンだろうが。良く見てみろ、あれを」と、ホトトギスに否定されてしまった。ホトトギスはそれでも魔術師なのかと言いたそうな、如何にも馬鹿にした眼差しでクロウリーを一瞥した後、その正体をセイラに告げた。


「セイラ、良く見てみて。あれは鷲の翼を付けているけれど、人間の顔をつけているでしょう。僕が推察するに、あれは伝説のスフィンクスだね。いやあ、こんなところでスフィンクスに遭えるとは、何とラッキーなんだろう。」


「何を珍しがっているのよ。」


 セイラは、ホトトギスを叱り付けた後、「それであれは強いの。どんな攻撃を仕掛けてくるの。まさか、空から何か攻撃を仕掛けてくる訳じゃないんでしょうね」と矢継ぎ早に尋ねた。


「そんなに一時に数多くのことを尋ねられたら、答えられないじゃない。まあ、それはそれとして、僕がいればセイラは安全だよ。だから大船に乗ったつもりで、すべて、僕に任せて。」


 そんなことを言っている間に、スフィンクスがセイラ達の前に静かに舞い降りてきた。メスのスフィンクスなのであろうか、セイラ達を用心深そうに見た後、絶世の美少年と言うべきカイに目を留めた。その視線には魅了の効果があるのであろう、カイが虚ろな表情をしてスフィンクスの方に向かって歩き始めた。


「行っては駄目、カイ君。」


 セイラの絶叫にも似たその叫び声もカイの心に届かなかった。カイは足を止めることなく、ゆっくりとした足取りでなおもスフィンクスの方に歩み寄っていた。


 邪魔をするなと言いたそうな、鋭い眼光をして、セイラを睨み付けてきた。その眼光を受けた瞬間、セイラの体の自由が全く聞かなくなった。それでも、カイの足を止めるために、体を動かそうと懸命な努力をしたが、彼女の体はセイラの石に反応を示そうとはしなかった。


「僕のセイラに何ってことをするんだ、この淫乱女め。カイを奪い取るのは勝手だが、俺様のセイラを緊縛するとは許せぬ。そこに直れ。俺様が成敗してやる。」


 スフィンクスは、口汚なく罵るホトトギスを今度は睨み付けた。その眼光を受けたホトトギスは、


「これはどうしたわけであろう。僕の体の自由がまったくきかないではないか。きっと、きっとスフィンクスの仕業だな。なんて悪辣な女郎(めろう)なんだ。こんな姑息な手を使うとは許せない。だが、体の自由が聞かないのだから、どうしようもない。このまま、カイが奪い去られるのを、黙って見送るしかないのか。何たる不覚。一生の痛恨事だ」と嘴を忙しく動かしていた。


 セイラは微かに動く目でホトトギスを凄まじい形相をして睨み付けた。その眼光に恐れをなしたかのように、彼の饒舌な嘴が彼の意思に反して勝手に動き出した。


「カイのことを煙たく思って、『このままスフィンクスに連れさたれたらいいな』なんて、全然考えていないよ。僕の体が自由に動けば、自由になれば、今すぐにでもスフィンクスを退治したいところなんだけど、自由になるのは嘴だからしょうがないじゃない。だから、そんな恐い顔をして、僕のことを見詰めないで。」


 そんなことを言っている内に、カイがスフィンクスのすぐ側にまで到達した。そして、気合い一閃、腰に佩いている剣を横薙ぎにして、スフィンクスの首をいとも簡単に刎(は)ね飛ばした。


 神話の世界では、スフィンクスは神の血を引いている、とされている。しかし、それはあくまで神話の中での話で、首を刎ねられたスフィンクスは盛大に血飛沫を撒き散らしながら呆気なく絶命してしまった。スフィンクスの死で、ようやく呪縛を解かれたセイラは、ようやく自由になった手を何度も動かしてから、スフィンクスの血飛沫を浴びたカイにこう尋ねた。


「どうして、カイ君はスフィンクスの眼光を受けて大丈夫だったの。それに、今まで魅了されていたのに、どうして急に体が自由になったの。」


 「それは」と彼女の疑問に答えようとしたカイの言葉に割り込むように、ホトトギスが疑問に答えた。


「僕が推測するに、それはおそらくカイの剣のためではなかろうか。セイラも知っているように、カイの剣は不思議な力を秘めているでしょう。その神秘な力に守られているために、スフィンクスの魅了の瞳が通用しなかったと思う。」


 ホトトギスはそう言った後も、何度も自分の洞察に頷いてみせた後、カイの剣を物欲しげそうな顔をして見始めた。


「この剣を売り飛ばせば、きっと、一財産を気付けるね。そのお金で南の島に僕とセイラの愛の別荘を買おう。セイラもいい考えだと思うでしょう。さあ、小僧、その剣を寄越しやがれ。」


 ホトトギスはその言葉を終えるのと同時に、カイの剣に飛びつき、両方の翼でしっかりと鞘を抱き締めた。


「お前には過ぎた刀だ。さあ、俺様にこれを寄越せ。俺様がこれを売り払ってやる。さあ、俺様にこの刀を渡すのだ。」


 カイとの間に騒動を起こし、スフィンクスの呪縛にかかった振りをしてカイを見殺しにしようとした一件をうやむやにするつもりなのであろう。自分の機先を制するために、様々な騒動を引き起こし、自ら引き起こした事件を闇から闇へと葬り去ろうとするホトトギスの悪辣な精神にいまさらながら辟易とし、セイラは、次から次へと様々な言い訳を思い付くホトトギスに呆れ果てた。彼女は、ホトトギスがカイの刀の鞘にしっかりとしがみ付き、その所有権を訴えているのを、放心したような顔をして暫く眺めた後、「いつまで馬鹿なことをやっているのよ。それより先を急ぐわよ」と怒鳴り付け、彼の体を引き剥がした。


「カイの刀を売り飛ばしたお金で、南の島に僕とセイラの愛の巣になる別荘を買おうと思っていたのに、残念だな。まあ、この遺跡を調査すれば、金目の物があるかもしれないし、それで我慢することにしよう。」


 自分に言い聞かせるように、ホトトギスはそう言った後、大きな荷物を背負い再び歩き始めた。


今日のアニソン、「境界の彼方」 [今日のアニソン・アーカイブ]

今日のアニソンは、「境界の彼方」です。



ネムネコは、このアニメを見たことがありません。そして、今日のアニソンで紹介するアニソンの多くも、アニメの方は見ていない。

そして、バレンタインデーまでのパワープレイのこの曲。



そろそろ、この曲に脳が侵食されて、ネムネコにチョコを送りたくなってきたのではなかろうか。


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3次(以上)の行列式の計算法 [ネコ騙し数学]

3次(以上)の行列式の計算法


  

と計算する。

2次、3次の行列式の記憶の仕方(サラスの方法)はあることはあるのだけれど、アレは4次以上の行列式では成り立たないので、危険だケロ。
ちなみに、2次の行列式は

  

だにゃ。


こうすると、規則性に気づくかもしれない(^^)

  

 


  

とすると、のところは、の属する第1行と第1列を取った

  

という「一回り小さくなった行列」の行列式が・・・。

のところは、の属する第1行と第2列を取った

  

のところは・・・。




Wikipediaの行列式
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%8C%E5%88%97%E5%BC%8F
の記事の歴史を読むと、面白いことが書いてあるケロよ。

遠く離れたヨーロッパと日本で、ほぼ同時期に、独立して行列式の研究が同時並行的に行われていた。
このことは、実は、とんでもないことなんだケロ。

ウィキペディアのこの記事に「サラスの方法」



が書いてあるけれど、これは4次以上では成り立たないので注意が必要。


第14回 3重積分の変数変換 [ネコ騙し数学]

第14回 3重積分の変数変換


3重積分の場合、ヤコビアンJは次のようになる。

定義
x=φ(u,v,w)
y=ψ(u,v,w)x=η(u,v,w)がともに級であるとき、次の行列式

  
を写像(x,y,z)→(φ(x,y,z),ψ(x,y,z),η(x,y,z))のヤコビアンという。

そして、次の定理。

定理

Ωxyz-空間の積分領域とし、関数f(x,y,z)Ωで連続とする。の変換x=φ(u,v,w)y=ψ(u,v,w)x=η(u,v,w)により積分空間Γに1対1対応するとする。このヤコビアン
  
J(u,v,w)≠0を満たすならば

  


で、3次元の極座標は、
3dkyokuzahyou.jpg

  


それで、このヤコビアンは

  

になる。


ということで、次の定理が成立するにゃ。


定理

Ωxyz-空間の積分領域とし、関数f(x,y,z)Ωで連続とする。極座標
  
により積分空間Γに1対1対応するとする。このとき

  
となる。


では、早速問題を。


問題1

  

「解」

このΩは原点を中心とする半径aの球で、上の積分はその体積。積分領域Ωを極座標変換すると、

  

になるので、

  

となる。

問題2

  

【解】

3重積分は計算が大変なので計算したくないというのが本音なのだが・・・。


極座標x=rsinθcosφ,x=rsinθcosφ,z=rcosxθで変換すると、

  

になる。
よって、
  



タグ:重積分

セイラ2 12章の続き1 [セイラ2]

 それからも、トラブルメーカーと言えるホトトギスは様々な我が侭を言って、セイラの胸襟を悩ませ続けた。その度ごとに、彼はセイラに蹴られ殴られた。しかし、ホトトギスはそれにもめげず、ほとぼりが冷める頃になると、また新たな我が侭を言った。そして、そんなことをしている内に、遺跡の入り口に差し掛かった。

 おそらく古代の神か英雄なのであろう。遺跡の入り口である壮麗な造りの門の左右にその巨大な像が二体立っていた。ホトトギスは、少し離れたところで足を止めると、その像を仰ぎ見た。


「それにしても馬鹿でかい石像だね。おそらく、街に災いが降りかからないように街の入り口にこんなでかい木偶の坊を造ったに違いない。でも、お金の無駄遣いだよね。こんな物を造るお金があるのなら、僕にお金をくれたらいいのに。セイラもそう思うでしょう。」


 彼の「そう」という言葉が何を指し示すのか、セイラには理解できなかった。この巨像を造ったことが無駄だという意味なのか、あるいは、彼にお金をくれるべきだという意味なのか、それとも両方の意味なのか、セイラには判然としなかった。


「あんた、何が言いたいの。はっきり言わなければ、分からないでしょう。」


「こんな役立たずの物を作るお金があるのならば、僕にお金をくれたらいい、と言ったんだんだよ。そうしたら、僕が有効利用して上げるのにね。」


 有効利用と言っても、酒を買い集めるか、そうでなければ、いつも言っている、セイラとの将来に備えるために南の島に別荘でも買うつもりなのであろう。無駄使いという点ではどちらも変わりないだろうと思いながらも、彼との不毛で際限のない口論を避けるために「そうね」とだけ言って、彼女はお茶を濁した。そして、その言葉を待ち受けていたかのように、それまで口をあんぐりと開けて巨像を、ただただ、眺めていたクロウリーがとんでもない言葉を口にした。


「この石像に雪が降り積もっていないように見えるのは、私の勘違いでしょうか。」


 確かに、クロウリーが言う通り、この巨大な二体の石像には雪が降り積もっていなかった。どうして雪が石像に降り積もっていないのか、セイラは疑問に思い、歯切れの悪いクロウリーの質問の真意を質した。


「クロウリーさん、何をおっしゃりたいのですか。もう少しはっきりおっしゃって下さらないと、分かりません。」


 クロウリーは意味深な笑みを浮かべながら、「これは私の思い付きなのですが」と前置きしてから、自分の考えを披瀝した。


「誰かが雪を振り払ったのでなければ、この像がみずから動き出し、それで雪が落ちたと考えるのが自然だと思います。こんな巨大な石像が動き出すとは信じ難いことですが、ここは古代遺跡の街であり、常識では考えられないことが起きても不思議ではありません。ですから、絶対にそんなことはないと言い切れないでしょう。それに、私達は、ここに到達するまでの間、随分と変わった物に遭遇してきましたから・・・。」


 巨大ゴーレム、さらに蝿象などなど、常識では考えられない物に、セイラ達は遭遇し、その度毎、刃を交えてきた。そのため「まさか」とクロウリーの話を笑い飛ばすことができなかった。そのような彼女の心を代弁するかのように、彼女の小判鮫であるホトトギスが嘴を挟んできた。


「言葉には人知では及びも付かない神秘の力が宿されているんだから、滅多なことを言うもんじゃない、クロウリー。お前のその言葉が現実化したら、どうするつもりなんだ。ほら、見てみろ、今、お前のその言葉に反応し、この巨像が動き始めたではないか。」


 緩慢な動きではあったが、確かにその二体の巨像は動き始めていた。そして、ゆっくりとした足取りでセイラ達の方に向かって歩み寄ってきた。その偉容を目にし、セイラは恐慌状態に陥り、ホトトギスに言葉短にこう命令した。


「あんた、早くあれを何とかしなさい。」


 ドラゴンの骨を屠り、超合金でできた巨大ゴーレムを粉砕した、「地上最強のホトトギス」の名を縦(ほしいまま)にしているホトトギスである。図体がただでかいだけの、緩慢な動きをする二体の石像など、端から彼の敵ではなかった。しかし、ホトトギスは、背負っていた荷物を降ろしただけで、それ以上の行動に移ろうとはしなかった。


「何をやっているのよ。速くしないと、みんなあれに潰されてしまうじゃない。」


 どのような仕組みで動いているのか、不明であったけれど、石像の動く速度は人間の歩く速度よりもさらに遅い。。おそらく、戦闘目的のために造られたと言うよりはこの街の警護のために造られたのであろう。おそらく、どのような敵も、この巨大な石像が動くのを見れば、うろたえて逃げ去るに違いない。警備の任はそれで十分に果たせそうであろう。しかし、少し早足で歩けば無事に逃げおおせるし、走れば簡単に振り切ることだってできる。このまま放置しておいても、セイラたち一行にとって脅威になる存在ではなかった。しかし、ホトトギスは、頭を何度も右の翼で指し示し、この木偶人形を退治する見返りとして、自分の頭を後で撫でるよう、セイラに要求した。


 人の足元を見るようなホトトギスのその行動にセイラは激しい怒りを憶えたけれど、セイラやカイが手にしている剣でこの石像に立ち向かうことは出来ない上に、クロウリーの魔法がこうした巨大な魔法構造物に無力なであることは、これまでの戦闘で明らかであった。この絶体絶命の窮地を救えるのはホトトギスしかおらず、セイラは彼の厚顔無恥な要求を受諾した。


「分かったから、早くあれを何とかしなさい。」


「ハーイ。」


 ホトトギスは、暢気な声でそう返事をすると、その石像のコアを目掛け嘴から突っ込んでいった。ガツンと鈍い音を立てた後、彼の嘴は巨大な石像の胸を易々と突き抜け、魔法構造体を司っているコアを破壊した。そして、セイラのもとにに戻るついでに、残るもう一体の石像の背後から襲いかかり、そのコアを破壊した。


 コアを失った二体の巨大な石作りの魔法構造体は、元の石像に戻り、その場に巨大な音を立てて崩れ去った。ホトトギスはその上を何度も旋回した後、誇らしげにセイラの前に舞い降り、毛糸の帽子を取ると、彼女に頭を突き出した。


「わかっているわ、約束は守るわよ。でも、今は先を急ぎましょう。」


 セイラは、ホトトギスにそう言い残し、遺跡の中へと入っていった。


今日のアニソンは、「AIR」から「鳥の詩」 [今日のアニソン・アーカイブ]

今日のアニソンは、アニメ「AIR」から「鳥の詩」。





そして、バレンタインデーまでのパワープレイのこの1曲。




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第13回 3重積分 [ネコ騙し数学]

第13回 3重積分


2重積分と同じように、3重積分、そして、n重積分を定義することができる。基本的に同じなので、3重積分をその代表としてやりますにゃ。


閉区間で有界な関数f(x,y,z)に対して、Kの分割を細かくしたリーマン和が一定の値に収束するとき、f(x,y,z)は積分可能であるといい、その極限を
  

とあらわす。

そして、定数関数1が有界な集合上で積分可能であるとき、体積確定といい、

  

Ωの体積という。

そして、3重積分を計算するときには累次化して積分する。

定理

f(x,y,z)で連続であれば、

  


なお、

  

のことなので注意してください。

上の定理は積分領域が直方体の場合で、より一般のΩの場合は次のようになる。

f(x,y,z)
の積分領域Ωで連続とする。xy平面上の積分領域DD上の連続関数により、Ωが縦線集合

  

としてあらわせるとき、

  

さらに積分領域DD上で連続な関数によって

  

とあらわされるとき、

  

となる。
こういうふうに累次化して積分する。


何を書いてあるかわからないと思うので、問題を解いて実例を示すにゃ。


問題1

  

【解】

  

なのだけれど、これは次のように計算してよい。

  

上の右辺はただの積分の掛け算なので、累次積分と区別するために、「・」を付けたにゃ。


2重積分でも計算量が多いのに、3重積分はさらに計算量が多くなるので、大嫌いだにゃ。


問題2

  

【解】

Ωは次のように縦線集合に書き換えることができる。

  

積分領域D

  

よって、
  


3重積分は、こんな簡単なものでも、とにかく計算が大変です。







タグ:重積分